E級日記

もんがぁ のE級的生活の記録です

如月の京都 散策(その2)

京都旅行、二日目です。この日は四条南座で「市川海老蔵 特別公演」を観ます。
朝9時の祇園花見小路です。なんだか映画のオープンセットみたいですね。まだ早い時間とはいえ、こんなに閑散とした花見小路は見たことがないです。

今から何十年か前、まだ外国人観光客が少なかった頃は、こんな感じだったかもしれません。中国人観光客が消えた京都、妙に静かで不思議な雰囲気です。


朝食は祇園「朝食 喜心」で頂きます。この店は「草喰なかひがし」の三男・篤志さんが料理監修しておられるとか。ワンクルー10名まで、一日5回、完全予約制。集まったのは日本人と外人さんが半々くらいで、少し緊張した雰囲気です。

この店で提供されるのは、土鍋で炊いたご飯と一汁一菜の朝食です。客の目の前でご飯を炊いて、炊き上がりから、蒸らし、焦げまで米の変化を味合わせる、これは日本の伝統的食文化である炊飯をフューチャしたひとつのエンターテイメントですね。

まず、煮えはなのご飯を味見させて頂いた後、十分に蒸らしたご飯で一汁一菜です。汁は白味噌の豚汁、菜はウルメイワシの干物でした。

外人さんは全員、ウルメイワシに箸をつけなかったのが印象的。小さいとはいえ姿が分かる魚を、丸ごと食べる習慣がないのだと思います。ご飯をお替りして、玉子かけ飯を頂きます。もちろん、最高に美味かったです。

最後におこげを頂きます。これは香ばしくて美味しいです。

煮えはな、十分に蒸らしたご飯、おこげ。3種類のご飯を食べさせる、これは御趣向です。外人のお客さんも皆満足されたみたいでした。こういうふうに日本の食の原点を外人さんに味わってもらうというのは良い試みで、素晴らしいと思います。

朝食 喜心 京都市東山区小松町555 花とうろホテル祇園1F
www.kishin.world


11:00の開場に合わせて、京都南座へやって来ました。2年間にわたる大規模な耐震改修工事を終えて新装なった南座ですが、新しくなってからは初めて訪れます。

「市川海老蔵 特別公演」。5月に迫った「十三代目市川團十郎」の襲名、その海老蔵の特別公演ということですから、これは見逃せません。海老蔵もこれまで色々あったけれど、それを乗り越えて、本当に歌舞伎界を背負う大看板になりましたね。

特別公演なので上演時間は短め。演目は中村児太郎の舞踊「羽衣」、それと市川宗家のおはこ歌舞伎十八番の内から「勧進帳」、もちろん海老蔵が弁慶を演じます。

開演時間に南座の前に着くと、ここだけは大勢の人が集まってすごい熱気ですね。

新装なった南座、館内の装飾などは以前とさほど変わらないように思います。

私たちは花道近くの桟敷席に座りました。舞台と花道が真近に見えます。少々窮屈ですがテーブルも付いているので、中々快適です。

公演はとても良かったです。私自身は海老蔵を見るのは3回目ですが、本当に充実して脂が乗り切った感じ。いま誰よりも見る価値がある歌舞伎役者だと思います。
演目の間に挨拶と質問タイムがありました。素顔の海老蔵を真近で見るのは初めてです。海老蔵はかなりユニークな性格で、質問応答はとても面白かったですよ。健康の秘訣を聞かれて、「食べないこと」と答えてました。海老蔵のブログとかを見ても、普段からかなりストイックな生活をしているのが分かります。日頃暴飲暴食の私などは耳が痛いですね。

幕間に弁当を食べます。桟敷席はテーブルが付いているので物を食べる時には楽です。

四条河原町のデパ地下で買った「下鴨福助」の弁当、美味いです。

デザートは「出町ふたば」の豆大福。生地はもっちり、甘さ控えめの餡にお豆の塩加減が絶妙で、何度食べても飽きないですね。

「市川海老蔵 特別公演」は京都の後は博多に移動して公演されるとのこと。京都公演は予定通り開催されましたが、新型コロナの影響がこれからどうなるのか、公演が継続されるのか心配されるところです。

京都南座 京都市東山区橋東詰町四条大橋東詰
www.shochiku.co.jp


歌舞伎見物が終わって、晩飯まで時間があります。少しぶらぶらしようと、四条河原町から久しぶりに市バスに乗って、上賀茂神社へやって来ました。

観光客は殆どおらず静かな境内、ゆっくり歩いて回ります。オフシーズンということもあるのでしょうが、こういう静けさは貴重。本来の京都を味わえる感じがします。

神社の傍にある社家町を歩きます。社家というのは上賀茂神社に仕える神職の家々で、静かで美しい街並みです。京漬物の”すぐき”発祥の店もここにあります。

1時間以上かけてゆっくりと散策、とても良い気分転換になりました。

上賀茂神社 京都市北区上賀茂本山339
www.kamigamojinja.jp


再び市バスに乗って四条河原町まで戻って、二日目の晩飯は木屋町の「喜幸(きいこ)」です。こちらはあの開高健も通ったという京都の老舗小料理店です。

ここに来るのは二度目、お店は姉妹二人で切り盛りされています。以前来た時にはもう一人老婦人がおられたのですが、いまは出ておられないのかな。

付き出しは3種の中から選べるので、私たちは”てっぱい”、”おから”を選びました。”てっぱい”は一般に言うところの”ぬた”ですね、小鉢に山盛り供されます。分葱、シメジ、ニンジン、油揚げ、近江の赤コンニャクなどが酢味噌で和えてあって美味いです。

続いて”甘鯛(ぐじ)の焼き物”。松笠のような鱗が美味しい、これも京都ならではですね。

この店の名物のひとつ”かぶら蒸し”です。具材は甘鯛、銀杏、しめじ、ゆり根、粟麩など。餡の上には柚と山葵がのせられています。文句なしに美味いです。

京野菜の”炊いたん”、はんなりしたネーミングです。食べたのは聖護院大根、京人参、飛竜頭、出汁が美味しいので何を食べても美味いですね。

川魚(ハヤ、ゴリ)の素揚げです。実はこの川魚は「喜幸」の女将が鴨川で漁ったものです。そのことは、NHKの番組「遠くへ行きたい」で紹介されてましたね。店の中にある水槽から魚をすくって、直ぐに揚げて貰えるのだから不味いわけはないですよね。川魚特有の仄かな苦みもあって、これは最高に美味いです。

季節によって品書きが変わるし、酒の肴も京都ならでは。接客も含めていろいろな意味で京都の粋を感じられる居酒屋です。ここは何度でも訪れたい店ですね。

喜幸 京都市下京区西木屋町通四条下る船頭町202