E級日記

もんがぁ のE級的生活の記録です

秋の京都の旅 二日目

京都旅行二日目、今日は京都の南郊を巡ります。
ホテル近くの喫茶店で朝食を食べた後、京都駅からJR奈良線に乗ります。しかし、この車両、外人率が高いなあ〜と思ったら、皆さん稲荷駅で一斉に降車。やはり目的地はここでしたか。
■伏見稲荷
近年ここは外国人観光客の人気がとみに高いそうです。京都に限らずですが、日本の観光地は外国人観光客が増えましたね。特に多いのは中国人ですが、ここ伏見稲荷でさりげなく調査したところ(言葉などによる私の推計ですが)、日本人は全体の3割程度、4割が中国人(本土と台湾が半々くらい?)、その他の国(欧米、韓国、東南アジアなど)が合わせて3割といったところです。圧倒的に中国人が多いですねえ。ホント大丈夫かなあ、いつか日本の何もかもが中国に買い占められてしまいそうで怖いです(笑)。

まずはお参り、家族の無事と幸せをお祈りしました。

伏見稲荷の見所はやはり千本鳥居なので、皆そちらに向かいます。

うわ〜思ったより大きな鳥居、それが立ち並ぶ様は壮観ですね。これが全て個人・法人が寄付したもので、裏に寄贈者の名前が記されています。高野山に行った時にも思ったのですが、日本人ってこういうのが好きですよね。これも日本の文化のひとつだけれど、その結果外国人に受ける名所が出来たわけですね。

上に登るにつれて小さな鳥居になっていきます。時々歯抜けになっている個所には、次の鳥居の寄贈者の予約の札が、、山の下のほうが良いポジションなので人気があるみたいですね。

いや〜これだけの鳥居が並ぶ景観は他所にはないし、稀有な観光スポットですね。私自身は以前京都に住んでいたのに、実はここに来るのは初めてです。一度は来てみたかったので満足しました。


■黄檗山萬福寺
再びJR奈良線に乗って、黄檗駅で降車しました。次の目的地はこちらです。さすがに外人観光客もここまでは来ていませんでした。黄檗宗は禅宗の一派で、江戸時代初期に明から渡来した隠元が開いた宗派です。いまでも、かなり大きな立派なお寺ですね。

堂舎は禅宗らしい落ちついた佇まいです。

本堂の左右の壁面に並ぶ十八羅漢像。結構いろいろな仏像がありました。

実を言うと、、この寺を訪れたのは昼飯を食べるためです。そのことについては、後段をご覧下さい。


■宇治平等院
さらに電車で宇治に移動。ここは平等院の参道入口です。この先は土産物店が並ぶ宇治の名所ですね。

宇治橋から宇治川を眺めます。源平合戦の折の先陣争いで名高い場所です。

前回来たのは3年前、その後で鳳凰堂の大修理が行われたので、新しくなった鳳凰堂が是非とも見たかったのです。鮮やかな朱色に塗られて生まれ変わった鳳凰堂。創建時の姿に戻ったということでしょうが、以前の渋い色合いも良かったんですけどね。
鳳凰堂の内部は見学することができます。堂の横に受付があって、50人毎のグループ単位で入堂できます。前回は2時間ほど待つ必要があったので諦めたのですが、今日は必ず見る覚悟で臨んで、幸いなことに30分程の待ち時間でした。

初めて入る鳳凰堂の内部、阿弥陀仏座像が鎮座します。平安末、末法思想、定朝作、寄木造り、、日本史の教科書で習ったことが頭を過りますね。想像以上の大きさです。鳳凰堂の外側は塗り直されましたが、内部は一切手を加えてないようです。一番目を奪われたのは像の上の天蓋の精密な装飾、これは凄いな〜。内部は撮影禁止なので、写真が撮れないのが残念でした。

予想外の感動でした。今回の旅行で見たものの中では、この鳳凰堂の内部が最高だったかも。さすがに十円玉の意匠に使われているだけのことはあります。ちなみに一万円札の裏に描かれている鳥もこの鳳凰堂の屋根にいる鳳凰です。いま屋根にいるのはイミテーションですが、実物(国宝)は寺内にある「平等院ミュージアム鳳翔館」で見ることができます。


この日に食べたものは、以下のとおり。いろいろあって、充実した一日でした。
■前田珈琲
今回は四条烏丸近くのホテルに宿泊していたので、朝食は前田珈琲の本店にやって来ました。

ここも40年ほど前からある結構古い店ですね。ここでモーニングを頂きます。

コーヒーも大振りのカップにたっぷり、カスクートサンドは、ふわふわの白パンにハム、チーズ、タマネギを挟んで焼いてあります。黒コショウの風味とタマネギのシャキシャキ感がアクセントになっていますね。

前田珈琲本店 京都市中京区蛸薬師通烏丸西入ル橋弁慶町236


■萬福寺 普茶料理
今回こちらの寺を訪れたのは食事をするのが目的です。えっ!お寺で食事?、、とお思いでしょうが、実はそうなのです。萬福寺は禅宗(黄檗宗)の大本山、そこで普茶料理を頂きます。禅宗ですから、庫裏の前には食事時に打ち鳴らす木魚が吊るしてあります。長年使われているので、叩く部分が擦り減っていますね。

外部の一般人はこちらの黄龍閣という建物で食事を頂きます。広い座敷に4人掛けのテーブルが並んでいて、衝立で間仕切りがしてあります。普茶料理では一卓に四人が座るのが、基本の形式みたいですね。

さて、「普茶料理」というのは、黄檗宗の開祖隠元禅師が中国から伝えたという精進料理です。「普茶」とは「普く(あまねく)大衆と茶を供にする」という意味を示すのだとか。私自身が食べた感想としては、長崎の卓袱料理の精進版といったところです。
まずは"筝羹"と"麻腐"です。"筝羹"とは旬の野菜や乾物の煮物などを大皿に盛り合わせたもので、いろいろな料理が並びます。"麻腐"は文字通り胡麻豆腐のことですね。

"筝羹"の皿は、生麩を煮たり焼いたり揚げたりといったものがメイン。その他に豆腐の味噌漬け、山芋を使った料理などがあります。精進ですから食材に制約がありますが、いろいろな味付けや調理法が駆使してあって、飽きずに楽しめるますね。

"油じ"という味のついた天ぷらです。素材やコロモ自体に味がついており、唐揚げに近い感じかな。素材はコンニャク、ダイコン、紅生姜、ゴボウ、サトイモ、リンゴ、餡餅など。リンゴや餡餅は箸休めの意味もありそうです。揚げ物なのでビールがほしくなりますが、精進料理なのでお茶で我慢します。

"雲片"は揚げた素麺の上に野菜の葛餡が掛かっています。皿うどんの精進版といった感じですが、禅宗的な意味としては、調理の際に残った野菜のへたなども余すことなく頂くために、細かく刻んで使うのだそうです。

"飯子"(ご飯)、"寿免"(唐揚げ汁)、"えん菜"(香の物)です。ご飯は季節の栗ご飯、お汁には梅干しの揚げたものが入っていました。これは意外と美味しくて、ご飯にも合いました。香の物の中では小さな瓢箪の漬物が面白かった、いろんなところで珍しいものが出てきます。

締めのデザート"果菜"は、オレンジと宇治の銘菓"茶団子"です。結構お腹一杯になりました。

これで一人前5,000円のコース(写真は二人前)です。う〜ん、面白かったけれど驚きはなかったなあ。精進料理というと"洗練の極み"といったイメージがありますが、これはむしろ素朴な田舎料理という感じでしたね。これはこれで悪くないし、身を養うに十分な栄養も摂れそうです。身体のためには良いでしょうね。
萬福寺 宇治市五ケ圧三番割34


■木屋町 志る幸
夕方には京都の町中に帰ってきて、晩飯はこちらの店へ。
四条河原町近くの路地裏にある趣のある佇まいの町屋、ここは幕末時代には古高俊太郎の店があった場所だそうです。古高俊太郎というのは勤王の志士で、新選組に捕えられ拷問されて自白し、あの池田屋事件の契機となった人物ですね。古高は薪炭商でしたが、「志る幸」は昭和の初めにこの店舗で営業を始めたそうです。池波正太郎のエッセイでも紹介されていますね。

店に入ってカウンターに座り、まずはビールを注文して一服です。

店内はとても変わった造りで、中央には能舞台を模したカウンター。その外側に三条、五条大橋の欄干に見立てた客席があります。すべての席が女将が座る帳場台を眺める向きに座ることになります。これは面白い造りだなあ。

名物の利休辨當(2,500円)です。扇形に整えられた"かやく飯"、ブリと鶏の焼き物、てっぱい(ぬた)、ゆで玉子、きゃらぶきといったお惣菜に、お汁が付きます。
この店は汁が売りですから、その点は凝っていますね。味付けは白味噌、合わせ味噌、おすましの三種類から選ぶことができ、具は豆腐、ハマグリ、なめこ、湯葉などから選んで、自分好みの汁に出来ます。"おとし芋の味噌汁"がお薦めですよと言われたので、それにしました。これは大和芋の摺りおろしを入れたもので、ねっとりとした食感と芋の甘味で、これまで食べたことがない美味い味噌汁でした。

こちらは"えび芋"です。お出汁の味がよいですね。ここからぬる燗のお酒に変更。

最後にグジ(甘鯛)の焼き物、やはり京都らしい一品です。サービスで山椒風味の塩辛を出して下さいましたが、これが美味かった。日本酒の肴には最高ですね。

この店は飲み屋さんというより、味噌汁とかやく飯で食事をする店という感じです。飾らない京都の美味い物を出すお店として、名店の一つではないでしょうか。
志る幸 京都市下京区西木屋町四条上ル真町100